田舎産委員の東京体験記vol.1 ~初上陸編~

はじめに

皆さんどうもこんにちは。わざわざこんな記事を見に来るとは随分物好きなようで。自分は大学近くに下宿する一橋大学経済学部1年の一橋祭運営委員。体感7割程の生徒が実家から通う一橋大学ではありますが、その実家は各地に散らばっていることを勘案すれば、下宿生である自分は最も量産型の一橋生と言えるでしょう。――ただ一点、超がつくほどのド田舎の出身であることを除けば。

この記事は、そんなド田舎から東京にやってきてしまった田舎産委員から一つの町に今日まで住み続けてきたサラブレッド達へ贈る、カルチャーショック体験記です。初回の今回は初めて東京に来た時のエピソード。別に地方格差を描く社会派マガジンというわけでもないので、どうぞ旅行記を読むようなエンタメ気分でごゆるりとお楽しみくださいませ。

ド田舎って何よ?

とまあ前置きはこの辺にして本題に入りたいわけですが、東京体験記の前にそもそもド田舎って何よ? という疑問に答えねばならないでしょう。地元のド田舎エピソードなんて掃いて捨てるほどあるわけですが、本題はそれではないので手短に3点挙げさせていただきます。

・電車ではなく汽車が走っている

・最寄りの映画館までバスで2時間かかる

・3年前まで最低賃金が700円台だった

いかがでしょうか。この箇条書きだけでもそのド田舎っぷりは理解していただけたのではないかと思います。本当はこのまま田舎エピソードを1万字位書き続けたいのですが、それはまた機会があればということで。

まず移動で圧倒される

前置きが長くなりましたが、そろそろ本題の東京に初めて行った時の話に入ろうと思います。僕が初めて東京に来たのは一橋大学の受験の時でした。受験前日に飛行機(そもそも飛行機に乗るのも初めてだった)で羽田に降り立った僕の目に飛び込んできたのは、あまりにも大きい空港。地元のそれとあまりに違う空港の姿、遠目でも十分にわかるビルの数々、そしてなにより初めて乗った飛行機が無事に着陸してくれた安心感で興奮したことを覚えています。(関係ないですけど飛行機って怖くないですか? 離陸するときの後戻りできない感じが本当に怖い。緊急時対応のビデオを見せられるのも怖さを助長してると思う。まあ飛行機なんて受験の行き帰りと引っ越しの3回しか乗ったことないんですけどね。)

ただこれは序章に過ぎなかったのです。本当に圧倒されるのはこの後、羽田からホテルを取った立川までバスに揺られた時でした。まずは林立する高層ビル。人生で見たどの建物よりも高い建物が視野いっぱいに広がる光景の衝撃は言いようがありません。次いで長すぎるトンネル。皆さんは知らないかもしれませんが、田舎では普通トンネルは一本道なんですよ。普通入口の時点で出口の光が見えているし、普通中に看板なんてない。一本道だから案内なんて不要というわけです。その価値観を叩き壊してくれたのが東京のトンネル。当然のように分岐。当然のように多車線。挙句の果てにトンネル内に信号。渋滞も相まって数十分こんな異世界トンネルで過ごした僕の疲れが想像できるでしょうか。もしこれから人生初の東京に行こうという方がいるなら、僕はアイマスクを持っていくことを推奨します。ありえないものを見すぎると心が摩耗してしまうから。人は一日に受け止められる限界というものがあるのです。

自動改札とかいう田舎者チェッカー

自動改札。皆さんはご存じでしょうか。一部の例外を除き、現代人なら誰でも知っていると思います。ただもうお察しだと思いますが、僕は当然一部の例外だったわけです。この記事を書きながら調べて初めて知ったのですが、執筆時現在日本で自動改札がない都道府県は2県しかないのだそうです。思ったよりも僕の地元は特定が簡単らしい。皆さんも是非僕の地元がどちらか予想してみてください。

とまあそういうわけで自動改札を知らない田舎者受験生だった僕なわけですが、先述した通り僕はホテルを一橋大学のある国立市の隣町、立川に取っていたのです。つまりどういうことか?そう、受験のためには改札を通って電車に乗らねばならないのです。結論から言うと、残念ながら僕は改札を無事に通過することができませんでした。2日ある受験のそれぞれで往復、計4回電車に乗るわけですが、2回ほど改札に引っ掛かりました。

まずは1回目。受験1日目の朝のことです。人生初の自動改札にドキドキしながら切符を握りしめて改札を通りました。当然ICカードなんて小粋なものは持っていません。切符を改札に当てる。一歩踏み込む。電子音とともに改札が閉まる。お分かりいただけたでしょうか。そう、切符を改札に当てているのです。自動改札なんて通ることはおろか見たこともない田舎者には、ICカード用の読み取り部分と切符の挿入口の違いなど分からなかったというわけです。数回切符をぺちぺちしていたところで同行してくれていた父(まあこの人も田舎者なわけですが)が異変に気付き、切符には挿入口があるということを教えてくれました。切符を当ててからのスピード感が大事なのだろうかと考え始めていた僕は、それで初めて改札の通り方を理解したというわけです。

そして2回目。今度は受験2日目の朝の話です。どうして毎度毎度受験直前の朝に引っかかるのでしょうか。前日の朝には失敗したものの、その後帰りには無事改札を通過した僕は多少の自信を得ていました。未だ少しドキドキはするものの、まさか引っかかるとは思ってもいません。相も変わらず切符を握りしめて改札へ向かっていきます。切符を挿入口に入れる。一歩踏み込む。電子音とともに改札が閉まる。どうして? 今回はちゃんと挿入口に入れたはずなのに? 今度はただ止められるだけではなく、改札は電子音を鳴らし続け、赤色に点滅しています。日々自動改札を利用している人は分かるかもしれません。故障です。そう、2回目に止められた理由は自動改札の故障だったというわけです。時間もないので点滅を続ける改札を背にして再び切符を買い、別の改札を通りました。そうしている間に父が駅員さんに状況を説明します。時間もないからとその場を後にした僕たちだったわけですが、駅員さんはわざわざ後を追って来て故障した改札に飲み込まれた切符を手渡してくれました。あの日の名も知らぬ駅員さん、親切にどうもありがとう。心が救われました。

その後は無事受験を終え、現代モザンビーク・ジンバブエ史とかいう悪問にキレ散らかしつつも帰路につきました。なお、空港へと向かう電車で小学校低学年と思われる子どもたちがICカードを首から下げて悠々と改札を抜けていく様を見て心を折られることになるのですが、それはまた別のお話です。

終わりに

今回の記事はこれで終わりです。皆さん、ここまで読んでくださりありがとうございました。思ったよりも各エピソードが長くなってしまいほとんど受験体験記のような内容になってしまいましたが、楽しんでいただけたでしょうか。受験時の話なので写真がないのが残念です。次回以降は田舎者の僕の目から見た東京の各街について書いていこうと思っているので、よければまた読みに来てくださいね。

少し余談にはなりますが、この記事はそもそも「自分の常識と違うものに触れる体験を共有したい」という思いで発案したものです。もちろん僕はこの記事を読むだけでそうした体験ができるようにしたいと思って書いているわけですが、それでもやはり自分で体験するに勝るものにはできないと思います。もしこの記事を面白いと思ってくださったなら、ぜひ皆さんも自身で育った環境と違う場に行ってみてください。きっとそれは驚かされることばかりの、本当に面白い経験となるはずです。皆さんの人生が少しでも豊かなものとなりますようにと願ってこの記事は終わりとさせていただきます。それではまたどこかで。