第55回一橋祭

受験期に闇堕ちした話

皆さんどうもこんにちは。経済学部1年の田舎産委員です。わざわざこんな記事を見に来るとは随分物好きなようで。今回の記事の内容はタイトルの通りで、受験期の僕が闇堕ちしていた時のお話。日記形式で時系列順に振り返っていこうと思います。今振り返ると尖りすぎていて中々に面白いので、ぜひ皆さんも最後までお楽しみください。

まずは前提

本題の闇落ちした時の話に入る前に、まずは背景となる僕の高校の話を少し。僕はハンドルネームにもある通り田舎の出身で、通っていた高校も地元にあるバリバリの非進学校です。同級生の中で一般試験で大学を目指すのはおおよそ四分の一程度、その中でも県外の大学を目指すのはさらにその半分。東京の大学を受けるということ自体が相当に珍しい環境でした。町に塾はほとんどなく受験勉強は独学、学校の先生は一橋なんてマイナー大学のことは知りません。皆さんの多くには想像もつかないような環境かもしれませんね。

兎にも角にもそうした環境に身を置いていた自分なわけですが、やはりそうした環境での受験勉強というのは中々苦しいものがあります。自己管理を徹底することが求められる環境において僕がたどり着いた境地は、とにかく尖ること。言い換えれば闇堕ちすることだったというわけです。

~高2秋

高2の2学期。意識の高い受験生であればすでに基礎固めを進めてきているような時期。では僕はどうだったか? 何もしていませんでした。周囲の友人や学校の先生が何も言わないのを良いことに一切勉強せず、毎日毎日部活やゲームに明け暮れる日々。この時期のビハインドによって後々発狂寸前まで追い込まれるわけですが、当時の僕は何も知らずにのうのうと暮らしておりました。

高2冬・一念発起

上で書いたように一切勉強することなく生きてきていた僕ですが、高2の冬に入り、ついに自らの状況のまずさに気づきます。そして一念発起して正月前後から勉強を始めました。ここからの数か月は極めて順風満帆なものとなります。これまでの努力がないゆえに伸びしろは有り余り、基礎的な勉強をこなすだけでも成長実感を得られました。僕の受験期の中でも一番充実した時期だったと思います。この成長実感により僕は自身に才能があると誤解して過剰な自信とプライドを心中に抱えるようになり、これこそが後に追い詰められる直接の原因となるわけです。

高3夏・体育祭練習で青春コンプ発症

ここまで単なる受験レポマガジンのようになっていますが、皆さんご安心ください。ここからです。ここからが闇堕ちエピソードです。前置きが長くなりましたが、そろそろ本題に入っていきましょう。 

事の発端は高3の6月末。わが母校では9月の頭に体育祭が行われるのですが、その準備自体は6月末から始まります。中高一貫校だった母校において、最高学年として6学年を率いる立場に浮足立つクラスメイトたち。毎日体育祭の作戦やら欲しい仲間やらを話し合う日々。その状況で僕はどうしていたのか? もう予想はついていると思います。当然何にも参加していませんでした。今思うと、この時期が僕の闇堕ちの始まりだったと思います。

根本的な前提として、そもそも僕は運動が壊滅的に苦手です。まずセンスが絶望的で、そうして苦手ゆえに逃げ続けた結果体力も皆無。50m走は8秒台、ボール投げの記録は13m。これでは体育祭に活躍の可能性などあろうはずもありません。もっと言えば僕がセンスに欠けているのは運動だけではありません。授業で絵を描けば放課後先生に呼び出され描き直しを命じられましたし、音楽のテストでも先生からは呆れた目を向けられました。正直に言いましょう。僕は勉強以外何もできない高校生だったのです。そうして唯一の拠り所である勉強、つまりは受験への依存を深めてプライドを守ろうとした自分は、体育祭という青春イベントに没頭していくクラスメイトたちとの間の溝をも同時に深めていきました。

ここまでなら単なる陰キャで終わっていた僕ですが、問題があったのはここからです。日々強制される体育祭練習、練習の中で繰り返される𠮟責、そして何より上手くいかない自分に傷つく自尊心。これらに追い込まれた僕は、あろうことか体育祭に没頭するクラスメイトたちを敵対視するようになります。前提にも書いたように非進学校だった母校。クラスメイトも全員が受験に向けて努力しているわけではありませんでしたから、そこを槍玉に挙げて自らの心を守るのはとても容易だったのです。ここで生まれた謎の敵対意識――受験勉強をしている自分と他のことに没頭する同級生たちという心中の構図が、この先のさらなる闇堕ちに繋がっていきます。

高3夏・体育祭の裏で…

先述の通り体育祭で青春コンプを拗らせていた自分ですが、この時期からは勉強もうまくいかなくなります。基礎固めが大方終わり、応用的な問題にも取り組んでいこうかという時期。まずは小手調べとばかりに解いた過去問にボコボコにされ、心を病んでしまったのです。それまであった勘違いにも近い、というか勘違いそのものだった自信はベキベキにへし折られ、胸中には漫然とした危機感だけが広がります。ただでさえ体育祭練習に嫌気がさして練習に取り組むクラスメイトたちを敵対視し始めていた自分でしたが、この出来事はそんな自分を決定的に歪ませる契機となりました。体育祭で感じたコンプレックスと受験勉強での挫折の合併症として始まった僕の闇堕ちは、ここからさらなる悪化の一途を辿ることになります。

高3秋・加速する闇堕ち

さて、ではその悪化の様子を見ていきましょう。この時期に何が起きたのかを一言で表すなら、「後戻りが出来なくなった」です。文字に起こすとそう長い話には見えませんが、受験勉強を始めてからここまでですでに半年。しかし芳しくない成績。焦る自分は、とにかく勉強時間を増やそうと考えました。別に問題ないんじゃないかと思った方もいるかもしれません。勉強時間を少しでも増やそうという発想は受験生にとっては典型的なものですし、多少オーバーワークになることはあってもそれ以上の問題はないように思えます。しかし違うのです。僕の場合に問題となるのはその増やし方です。心が追い込まれすぎた僕には勉強をしていない時間が許せなくなりました。結果、病的なまでに全ての時間を勉強に充てようと考え始めます。教室移動の時間は古き良き二宮金次郎スタイルで教科書を読む。授業中はほとんど話も聞かずに内職。挙句の果てに体育の時間にすら手に書き込んだ暗記メモを読み込む。流石に少し過剰としか言いようがありません。

この病的な勉強習慣を象徴するエピソードがあるのでここで披露しようと思います。僕のいた学校では年に3回、スポーツデーというみんなで一日運動をする日がありました。そのうちの1回が秋ごろに開催されるのですが、ここまで読んでくださった方ならわかるでしょう、当然このイベント中も受験勉強をしていました。他のクラスメイトたちがみんなでバスケに興じる中、1人体育館のステージ袖にこっそりと座って単語帳を読んでいました。優しいことに気を使って話しかけてくれる友人もいたのですが、そこでも受験厨を発揮した自分。「この時期に一日運動とか普通にやってる余裕ない。逆にそっちはそんな余裕あるの? 受験するんでしょ? 」などと気色の悪い返事をします。結果、みんなが試合を観戦して応援する中1人だけ単語帳を読み込むという地獄のような光景が爆誕しました。そもそもそれなら来るなよという話なのですが、それはなぜか嫌だったんですね。妙に生真面目。ちなみに試合には参加しようとしたのですが、普通にほとんど出してもらえませんでした。

共通テスト直前・尽きる愛想

ついに冬がやってきました。受験生にとっては勝負の時期。本番も迫るこの時期に果たして僕はどれだけの勉強をしていたのでしょうか? 実は、何もしていませんでした。これまでの様子からは想像もできない状況ですよね。何があったのか、順を追って説明していこうと思います。

これまで全く言及していなかったのですが、受験期当時の僕にはお付き合いしている方がいました。過去形であること、そして何よりこの文脈で唐突に出てきたことでもうお察しでしょう。ついに愛想を尽かされたのです。今考えればむしろよくこれまで別れていなかったなという感じですが、当時の僕からすれば唐突なこの出来事。ちなみにこれが12月末、共通テストまでおおよそ2週間という状況での出来事です。結果、絶望。誇張抜きに2週間寝込みました。特に後半は熱も出て、もはや共通テストを受けに行けるかどうかという状況に追い込まれます。どうにか直前の金曜日に熱自体は引き受験できましたが、本当に危うい状況でした。

共通テスト後・学校中からの賞賛

直前に寝込み、2週間一切勉強することなく受験した共通テストですが、存外に結果は良かったです。ですがこの章の本題はこの後、学校に戻って自己採点を伝えたときの話なのです。おそらく多くの学校でそうだと思いますが、僕の母校では共通テストの自己採点は学校に提出する必要がありました。その後は先生方がダブルチェックで採点をしてくださり、万が一にも採点ミスなどがないようにと確認してもらえます。ありがたい制度ですが、この制度上必然的に自分の得点は先生方に知られることになります。受験をする人自体そういない母校だったので、僕の存外良かった結果の情報はすぐに学校中に伝わりました。

面白いのはここからです。先述の通り先生方に得点を提出したところ、学校中から賞賛を受けることになりました。廊下を歩いているだけで先生や同級生に呼び止められ、「よく頑張ったな」「普段からあんなに勉強してただけあるね」などと声を掛けられるのです。一見誇らしい状況のように思われるかもしれません。実際初めは割と嬉しかった覚えがあります。しかし1週間も続くとどうでしょう。二次試験は刻一刻と迫り、その中で掛けられる言葉はだんだん重圧へと変わっていきました。受験生のメンタルにとっては何もかもが毒となるのです。

この時期から新たに始めた勉強習慣もあります。それは耳栓をつけること。学校での勉強はもちろんのこと、家で勉強している際にも便利でした。ただ、学校で耳栓をつけて勉強をしている人間が周りからどう見えるのかという話はまた別です。当時の僕はそれを格好いいと思っていたということだけ追記しておきましょう。

二次試験直前・ついに超える一線

これまで散々におかしな言動を繰り返してきた僕ですが、一つだけ超えないようにしていたラインがありました。それが学校を休むこと。妙に生真面目な僕にとっては唯一超えることに抵抗があるラインでした。しかし、二次試験も直前に迫るこの時期に、ついにこのラインを超えてしまいます。

事が起きたのは直前も直前の2月後半。受験生にとっては最後の追い込み期間。この時期であればこれまでのような僕の言動でさえ許容されるのではないでしょうか。その時期にわが母校では、あろうことか卒業式練習が開催されたのです。誰もが少しでも得点を伸ばせるよう知識を頭に詰めていくこの時期に、1人だけ行進の手のあげ方やら返事の声やらの練習をすることは流石に耐えがたく、ついに僕は学校を休みました。ついに一線を越えてしまったことに対する虚無感が大きく、結局その日の勉強はあまり手につきませんでした。

二次試験2日前・号泣

この受験エピソードも随分長々と書いてきましたが、ついに最終盤。二次試験の2日前までやってきました。この日に起きたことは章題の通り。大号泣していました。

苦節1年、ついにやってきた受験本番。それまで積み上げてきた努力が頭をよぎり、明後日から始まる試験の結果次第ではそのすべてが水泡に帰すという事実が重くのしかかり、そして何より自分のこれまでの言動が思い出されて落ちた後の周りの目が恐ろしくなる。それらの想像は、壊れそうになる心を過度な受験への傾倒をもって無理矢理に保っていた僕にとって、精神を崩壊させるに足るものだったのです。結局この日は1時間近く1人で泣き続け、そのままろくに勉強することもなく床に就きました。

この後の受験当日の様子については、別に闇堕ち要素もないのでここでは書きません。気になるという方はこちらの記事で詳しく書いているので、ぜひ読んでみてください。

余談・二次試験後

せっかくなので少し余談として、二次試験後の話も少ししようと思います。二次試験が終わってからは、それまでの様子が嘘のように楽しく遊んで暮らしていました。受験期はYouTubeやゲームの一切を禁止していたので、1年ぶりに触れるそれらの娯楽の面白さに感動しました。

そうして遊んでいるうちに、ついにその日はやってきます。そう、合格発表の日です。正直合格している自信はありましたが、それでもやはり怖いものは怖い。朝から震えながら合格発表のサイトを開きました。結果は、合格。それまでの努力が報われる瞬間でした。

まずは友人に結果を連絡し、みんなから祝ってもらえました。その後は学校へ向かいます。入口の時点で担任の先生が顔を赤くして走ってきて、見たことがないほどのいい笑顔でおめでとう、と言ってくれました。その後はお世話になった先生方のところを回っていき、それぞれの先生がお祝いや積もる話をしてくださります。紆余曲折あり、決して褒められた受験期ではありませんでしたが、それでも頑張ってきてよかったと強く感じました。

終わりに

さて、受験期に闇堕ちした話、いかがだったでしょうか。思った以上に冗長な話となってしまいましたが、少しでもお楽しみいただければ幸いです。

終わりに、そもそも僕の闇堕ちとは何だったのかについて少し話したいと思います。結局のところ、これは青春コンプレックスと非進学校コンプレックスの混ざりものです。他の人たちが楽しんでいるところに入りきれない疎外感と、自分の目標を100%で後押ししてくれない学校への不満。それらが「自分とは分かり合えない周囲」という一つの漠然としたイメージに混同され、結果周り全てを敵対視するようになったというのが真相でしょう。当時はそうした周囲全体を憎み、受験の結果さえ良ければそれらの苦しさや不満から抜け出せると盲信していた僕でしたが、実際大学に行ってみるとそんなことはまったくありませんでした。そこで受けた衝撃については話せば長くなるので、詳しくはまた機会があれば書くことにします。

そして最後にもう一つだけ。高校時代の僕の友人たち、先生方、本当にたくさん迷惑を掛けてごめんなさい。そして、そんな僕の合格を心から祝ってくれて本当にありがとうございました。あれだけ尖っていた自分ですが、今ではああして行った大学で楽しく暮らしています。

とまあよくわからない空気になったところで、この話は終わりにしたいと思います。もしよければ他の作品も読んでみてくださいね。ではまたどこかで。